日雇い派遣で生活するようになってから、二ヶ月が経とうとしている。日雇い派遣といえば、安い賃金で重労働、おまけに働きたくても働けない日があって収入が不安定、直雇用の人に顎で使われてストレスが溜まる、などのネガティブなイメージがあったが思ったよりも快適に働けている。
なので今回は、日雇いのメリットと、日雇い生活が精神的に良い理由をカントの啓蒙を利用しながら説明していく。
日雇い派遣の暮らし
私は、日雇いアプリのタイミー、ショットワークス、シェアフルと、派遣のバイトレを上手く交互に使いながら働いている。直近一ヶ月に試した職業については、
- 大手家具メーカーの倉庫
- ミールキットの工場
- コンビニエンスストアの倉庫
- 化粧品の検品
- 引越しセンター
- 物流 商品チェック
- コールセンター(テレビ通販)
- クリーニング工場(ホテルリネン)
- 臭気検査
の9種類の仕事をした。私にとって、この中で一番楽しかった仕事はコールセンターだ。臨機応変に対応しないとならず大変そうに思えるかもしれないが、あらゆることに対してマニュアルが作られているので、逆にマニュアル通りにやればいいだけだから一番楽だし面白かった。臭気検査も詳細は言えないが、給料はいいし特別なことをやってる感じがしてワクワクした。
日雇い派遣のメリット、デメリット
日雇い派遣のデメリットは、誰もが想像しやすいであろう
- 社会保険に入れない
- 仕事が安定しない
- 給料が低い(ボーナス等がない)
- 人間関係や環境に慣れるのが大変
などがある。しかし
- 責任がない
- 辞めたい時に辞められる(人間関係に縛られない)
- 毎日やることや行く場所が違って飽きない
というのは、想像以上に大きいメリットだったのである。
特に、人間関係に自由でいられるのは気持ち的に開放感がすごい。いろいろな現場へ行くとそれぞれの場所にお局や幅を利かせた人はいるものだが、派遣だから別に彼らの顔を立てなくていいし、何か言われても嫌な気持ちになったならそこへは明日から行かなければいいというのはとても楽だ。また、いろいろな職業や職場を体験できるのは、給料以上に社会勉強になってとても新鮮である。例えば私は、昔ホテルの清掃の仕事をしていたのだが、クリーニング工場で1日だけ働いてホテルから持ち込まれたリネンを洗浄する側になれて、社会の循環が見えた気がしてとても感動した。毎日が勉強と冒険の日々で、この身一つで社会を渡り歩けるのは大きな自信にもなるし、今までで一番イキイキしながら働けているような気がしている。
理性の私的使用とは
どこの職場へ行っても必ずいるのが、お局の他に、プライドの高い人たちである。彼らは自分の仕事に誇りを持っていて、やりがいも感じているし自分がいなければこの職場は回らないというような気にもなっている。プライドを持って働くことは悪いことではないが、自分の居場所は職場にあるというような考え、この仕事こそが自分自身だというような気概は、カントに言わせれば大人になりきれていない未成年状態である。
ところで、理性には2種類ある。それは理性を使用する場所のことなのだが、例えば政治や国際社会に関する自分の意見を述べるとか、より良い世の中について考えることを理性の公的使用と言い、仕事や学校で上司の命令に従ったりやる気がなくても頑張って働くというようなことを理性の私的使用と言う。仕事の生産性を向上させるアイディアを考えるというような場合は理性の公的使用にあたるが、ただ働くとかプライドを持って働くというのは、自分の感性的な幸福のみの充足を意図しているとして、私的使用にあたるのである。
カントは、人間は理性の私的使用のみならず公的使用もなす人間を目指すべきだと、つまり他人の指導を受けつつ、しかも他人の指導を脱するという二つの立場を往復できる存在者になりなさいと説いている。どういうことかというと、普段は上司からの司令を受けて仕事をし、上司からの受け売りを他人に教える立場でいるが、他人の知識の受け売りから脱し自らの考えを主張できる人間になれということと、教える立場にもなりながら教えられる立場にもなれというのである。人間が成長するためには、柔軟でしなやかなあり方が必要なのである。
ここで、日雇い派遣の生き様を考えてみよう。日雇いの人間は、働く時は職場の指導を受け、それ以外では働く場所や給料の調整などのマネージメント、派遣会社や派遣先と直接交渉するなどして主体的に生きている。そして、他の派遣に仕事を教える指導を受けて指導するのもできる両方の立場を行き来することができる。ただ、指導する側の立場は少々弱いので、ずっと派遣で生活するのは問題であるが、さまざまな働き方のなかで最も柔軟でしなやかなのは日雇い派遣という働き方ではないだろうか(フリーランスを除く)。
ということで、2項目めで挙げたメリット以外に、柔軟でしなやかな働き方ができるのが日雇い派遣のメリットである。今の生活に疲れた君も、退職して私とともに日雇い生活をしてみるのはいかがだろうか(笑)。
コメント