クルド人は元々、トルコやシリア、イラン、イラクに広がる山岳部に住む民族で、世界に約3800~4500万人いるとされる。中東で4番目に人口の多い民族であるが、国を持たない世界最大の民族である。
第一次世界大戦でオスマン帝国が破れ、帝国内部にあったクルディスタン(クルド人居住地域)がフランスとイギリスとロシアによって引かれた恣意的な国境線により分断されてから、各国で少数民族として迫害を受けてきた。
そのため一部のクルド人は、故郷を離れ世界各地へ難民として逃れているのが現状である。大半のクルド人は地理的に中東から近い欧州へ難民として逃げているが、一部はビザを取得しなくてもまず入国できる日本を目指し、今も増え続けているらしい。日本には約2000人が住み、その約6割が埼玉の蕨市付近にいるという。
蕨市付近にクルド人が住み始めたのは1990年代頃からで、当時はごく少数が集まっていたに過ぎなかったが、クルド人は家族や親戚の結びつきを重視する民族らしく、血縁関係がある人を徐々に呼び寄せたようである。
クルド人は独自の言語と文化を持ち、特定の宗教には属していない。だがクルド語にも方言があり、文字も共通している訳ではない。
クルド料理
クルド料理の主な特徴は、ふんだんに使われる野菜と果物、そして採れたてのハーブである。肉は子羊と鶏をよく食べる。隣接するイラン・トルコなどの中東からインド亜大陸にまで通ずる文化的な類似があり、西アジア料理の典型である。一説では、世界三代美食と称賛されるトルコ料理のルーツは、クルドから来ているとも言われている。
2021年10月16日、東京都北区にあるクルド料理店「メソポタミア レストラン」へ行ってきた。
クルド料理 メソポタミア レストラン · 〒114-0034 東京都北区上十条1丁目11−8 3F★★★★☆ · 中東料理店maps.app.goo.gl
十条駅(赤羽の隣)から徒歩ゼロ分の距離にあり、クルド料理を専門に扱うお店はここが日本で唯一である。普通は、日本に難民として逃れてきたクルド人は、ケパブ屋を開く傾向にあるのだとか(?)。
一品料理だけでなく、セットメニューの種類も豊富なのがありがたい(しかも夜でも頼める)。今回は、最も豪華に見えたメソポタミアセットを注文。
左上から反時計回りに、
牛ひき肉団子のぶるぐる包揚げ(トルコのピロシキ)
野菜の煮込み(じゃがいも炒め)
クルド流ピクルス
シェヘリエピラフ(米型のパスタ入り)
そして右上にあるのが
ヨーグルトスープ(温かい)
ヨーグルト飲料(冷たい)
となっている。
特に美味しいと感じたのがヨーグルトスープで、さっぱりとした胃に優しい感じがほっとする。中にはきゅうりとぶるぐる(小麦の挽き割り)入っており、バジルなどの新鮮なハーブの香りが食欲をそそる。また無糖のヨーグルト飲料も、ホエイのような少し酸味のある味がとても爽やかだった。「ヨーグルト飲料は食事中に飲むのがクルド流」と書いてあり、ミーハーな私は頼まずにはいられなかった(笑)。
またぶるぐる包揚げは、プチプチした食感としっかりとした歯ごたえが特徴的で、たまらなく美味しかった!
日本食とは見た目も味もかけ離れているけれど、流石トルコ料理のルーツ(かもしれない)と言われているだけあって、どれもとても美味しく日本人の口にも合いそうだ。
食後にはピスタチオ豆を100%使用したノンカフェインコーヒーを注文。クルド伝統のデミタスカップで出てくると書いてあり、これもまた頼まずにはいられなかった。(既にヨーグルト飲料とスープも飲んでいたので、お腹がはち切れそうだった)
感想としては、以前北海道で飲んだ大豆コーヒーと似ていた。苦味はコーヒーっぽいけれど、豆類の粉味があるのが特徴的である。
クルド人は、紅茶は甘く、コーヒーは苦いものを好んでよく飲むらしい。
お店に訪れた日は土曜日だったためか、オーナーでシェフの奥様の息子さんと思われる、中学生くらいの少年が注文を取ってくれた。
クルドの人々は長い間迫害を受け苦しんできたが、こんな多彩な文化を持つ彼らを羨ましくも思う。……などと、鮮やかな青色をした内装や、飾られているクルドの品々、不思議な見た目の神様のタペストリー(少年に名前を聞いても分からないと言われた)を見ながら考えていた。
自然と「クルドの人々が、本来の暮らしを取り戻せるように」と願いながら、私は店を後にしたのだった。
(2023年2月1日 23:09作成)
コメント