学校や職場、旅先で出会った人も含めて、私たち人間は沢山のご縁の中で生きている。しかし、卒業や引っ越しなどライフステージが変化していくことで、「また会おうね」と約束していても、いつの間にか自然と縁が切れていたなんてことを大抵の人は経験しているのではないだろうか。特に日本では、相手の気持ちを“察する“文化があるので、相手が忙しくないかとか迷惑をかけるのを恐れて、お互い連絡を控えてそのまま・・・なんてこともよくあるだろう。
私は留学先で興味のある人や親しみを感じる人がいても、どうせ卒業したら二度と会わないだろうし別れが辛くなるだけだからと、あえて距離をとって人と接するようにしていた。しかし別に友達になろうとして接していたわけではないけれども、なんとなく気があってよく話しているうちに、気付いたら良き友人になっていたなんて人が必ず何人かは現れるものである。それは先生であったり、生徒のうちの一人であったりするけれども、楽しく会話しているうちに、気付いたらあっという間に彼らの退職や卒業の日が来ていた。そこで私は考えた。せっかくこうして出会えたのに、「卒業します、はいサヨナラ」とブチッと縁を切ってよいものなのだろうかと。
フィリピン人は国内では稼げないので、力のある人はどんどんと他国へ出稼ぎにいく文化がある。なので彼らは、親戚や友人の誰かしらが国外にいるのが当たり前のようである。彼らに「国外にいる人とは疎遠にならないのか」と聞くと、そんなのあり得ないし、たとえ10年近くあっていなかったとしても大抵の人は連絡すればすぐに返事をくれるし、ビデオ通話もよくするというふうに教えてくれた。
私は典型的な日本人なので、心の壁は分厚いし他人に臆病で深入りしないことを好んでいた。しかし、フレンドリーで温かなフィリピンの人々と触れ合ううちに、私の心も少しずつ溶かされていったようである。そして私は気付いた。物理的な距離は、心の距離とは比例しないということ。ご縁とは、育てていくものだということに。
卒業、転職、結婚や出産など、人生の中には沢山の変化や別れが待ち受けているが、それらを乗り越えれば、ライフステージの変化をきっかけにより仲が深まるなんてこともあるかもしれない。自分の気持ちに正直に、大切にしたい人を大切にし続ければ、どこにいても友情や愛情は永遠に続いていくだろう。
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